そういえば会社員を辞めて、いくつか劇的に変わったことがあります。
会社員時代は当然ながら工場はチームで動いており、単独でずっと成立するものではありませんから、そこにはおじさんから若者まで様々な整備士がおります。
店主などは経験年数からいくとやはり工場長をやるしかありませんから、当然色んな業務を総合的にやったりしてました。
中でも最後の方で一番嫌だったのは若手の育成でした。
あまり深刻な話ではありませんので、半分冗談だと思って、軽く聞き流していただけると良いのですが、若手が嫌というより、彼らに道具や資材を貸さなくてはいけなかったのが一番嫌でした。
その中でも特にイラっと来たシリーズがありまして。
①ボンドやシール材が入っているアルミチューブを出口側から使う奴。
出口側から出していくと中間にくびれができて途中で割れるんですよね。 そして中間あたりからボンドが飛び出して来る訳です。 そして悲しいことに使い切る半場にて中身が乾燥しておじゃんであります。 こんなムカつく話がありますかね。
②ワイヤーロールを引き出す時に絡めてしまう奴。
ピアノ線の様な細いワイヤーをリールにした物を使うのですが、これを使った後にロールの箱に戻す時にきれいに戻さないので中で絡まってしまって、次引き出すと絡まった塊になって出てきて、もうぐちゃぐちゃで釣りの絡まったリールを開放するのと同じくらい難しい。
店主的には奇麗なロールからするすると出てくる管理に職人の美しさを醸し出したいのですが、その拘りを秒殺で破壊されます。
③貸したハンドツールを自分の工具箱に戻す奴
これは質が悪いです、そのまま気付かなければ未必の故意による窃盗でありますから。
これは何度もあって、見つからないなぁと思いつつ、やはり疑ってかからねばならないこちらの身にもなって欲しい。 まぁたまに冤罪を掛けるときもありましたが。
④普段借りている工具を買わずに店主でも持っていないようなハイテクツールを買う奴。
これもいますね、散々借りておいて、早く買えばいいのになぁと内心思っていたら、ある日凄い高いハイテクツールを買って使っているのを見ると順番おかしいだろと突っ込みたくなります。 まぁいいんですがね。
沢山ありますが、整備士の工具は大抵の場合、自前になりますから、毎月何万円も自己負担になります。
それを何十年も買い集めるわけですから自己投資だと思って何百万も投資せねばなりません。取り返すまでに成長する整備士もほんの一握りですから、それまでは先輩の工具を借りて過ごすしかありません。
店主の下積みの時代などは、勝手に先輩の工具箱を開けた日には頭を引っ叩かれたものですが・・・。 パワハラ?いやいや、指導ですよ、恐いから二度とやらない。
そんな苦しい自己資本の貸出業務ももうやらずに済むのかと思うと、なんとなく心が晴れやかであります。
とは言え、同レベルの職人に貸し出すのは何ら抵抗は在りません。
彼らの場合、裸で貸した工具が梱包材に包まって開けたらピカピカに磨かれていて、同梱でカップ麺が入っているくらいの気概のある人達です。
貸す方も貸してもらう方も、気概次第で行動も気持ちも変わってくものです。
人の財産を借りる、それがその人から信頼されて、安心感を持ちつ持たれつのお互いの呼吸の様な掛け合いであることを忘れてはならないと思う店主でした。
小春日和が近づいて、開放的な日々を待ち望む店主です。