2022年6月13日月曜日

さらば ショパンノクターン

1831年。 

パリの人々が評した。

「諸君、脱帽したまえ、天才だ。」

こう評されたのがショパン。

ここ何か月かずっとショパンを聴いている事が多い。

店舗での仕事を終え、自宅に帰る頃が21時~22時頃。 そこから自宅での事務仕事が始まる。

独立した後に分かる事だが、自営業者の仕事は店舗での仕事だけではない。

お店が終って、さぁ家でゆっくりビールでも飲むか!という事は殆どなく、やはり仕事は続いておおよそ深夜1時まで続く。

まさか!そんなひどい事ってありますのフランソワーズ!

というようなことはない。

自営業者は皆同じような物である、と思っている。

そんな自宅での仕事中に聞いているのがショパン。 以前はドビュッシーだったが、最近はショパンの方が機会が多い。  

店主は音楽に詳しくない、曲名も大抵は知らないし、本当に詳しい事は分からないが、ショパンは、あぁ~天才だな。と、思う。

ドビュッシーは店主の中でド変態なのだが、ショパンは天才だと思う。

ショパンのとある曲を聴くと、こんなイメージになる。

何百年と放置された廃墟の中で、一人で窓際に座って青々とした太い幹の大木の揺れる枝の隙間から差し込む暖かいのに悲しい木漏れ日を受けて、部屋の中がキラキラと光る。
もう誰も居なくなった場所に、且つての繁栄や賑わいを見出したい。
しかしやはり過去は過去。 永遠に戻る事のない時間への憧れと少しの嫉妬の様な物がある。 

そんな気持ちでまともな仕事が出来るのか?と思われるだろうが、意外と集中できている。

要は孤独になりたいのかもしれない。

孤独と言っても、往年のロックンローラーでもあるまいし、孤独は愛せないので、孤独になって集中したいのかもしれない。

店主も割と一人で平気な人間だが、孤独は嫌だ。(笑)

ショパンを聴いているとこうも妄想したりする。

彼は決して平穏な人生を歩んだわけではない、彼の生きた時代こそ、現在の平和な世界ではなく、暴力と戦争に溢れ、医療技術は低く、世界は争いに満ちていた。 

1800年代とはそういう時代だ。

彼は最終的に病魔に倒れるが、その闘病期も非常に長く、長きに渡り呼吸器系の病気に苦しめられて最後は闘病の末亡くなった。

彼の人生を紐解くと、そこに密接に孤独な世界が広がる。 それはショパンだから、という事ではなく、当時の世界がそうだった。 現代と比べて、電話もラインもない時代。

例え家族でも、一旦遠く離れてしまえば、電車でちょっと会いに行くなんてこともできないのだ。 会いたいと思えば、馬車を走らせ、文字通り戦火を抜けて会いに行く。

ショパンも同じくして、両親を早くに病気で亡くし、唯一の家族である姉がいたが、その姉ともそうそう頻繁に会えているわけではない。

一生を掛けた願いとして、願って願って、その思いがやっと再会につながる世界。

どんな再会だろう? どんな気持ちだっただろう。 その再会は。 次に会う事はもうないと思う様な、そんな機会。

店主は思う、そんな時代が生んだ天才音楽家、ショパン。 

ショパンは2022年をみたらどう思うかな。 ラインとかやりますかね?

死因は恐らく結核ではないかと言われているが、不運にも当時は治療法もなくそのまま死ぬだけだったようだ。

でも貴方の傑作が何故か見ず知らずのバイク屋のオッサンにも届いてますよ。 聴けば風景が出てくる音楽、よく作ったもんですよね。

貴方はこの先何世紀も生きたも同然。 ラッキーな人だなぁと店主は勝手に思う。

さぁ、仕事を進めていこう。




もう会えない人、これから出会う人、ショパンが感謝の気持ちを教えてくれる。

もっともっと多くを感じたい。

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