2024年1月4日木曜日

お墓参り

 明けまして、、、、、、、今年も宜しくお願い申し上げます。

能登半島地震の事もありますので、おめでとうございますとはなかなか言えない状況にありますので控えさせて頂きますが、それらも含めて長々と新年の所存を書き連ねていましたが、Wifiトラブルで全て消えてしまいましたのでサラッと終わりたいと思います。(笑)

お題にあります通り、先日は故赤峰氏のお墓参りにも行って参りました、こちらも思う所を長々と書いてみましたが全て消えたので、サラッと終わりにしたいと思います、申し訳ありません、、。

そういう時は執着せずに後ろに流してポジティブに無関心モードで先へ先へ、歩みを進めていきます。

今年は何があろうと明るく元気にポジティブをモットーに、全力で生きます。 昨年も変わりませんが。



2023年12月26日火曜日

年末年始スケジュール


いつも芦田屋ブログをご覧頂きありがとうございます。

年末年始のスケジュールの告知になります、予めご了承の程宜しくお願い申し上げます。


2023年12月24日日曜日

キエル魔球 ~種田ホープ件~ その2 接触

「おい足田、お前そんなに歩くの遅かったか?」

「ん?ああ、ちょっと足首を痛めててな。」

「お前、まさか。」

「それはない。忌部の一件以来やばい事はもうやってない。」 

「なら良いが、俺が救った命をせいぜい大切に使ってもらいたいもんだな。」

「ごちゃごちゃうるせぇなぁ、お前は。 ちょっと人助けしてただけだよ、小姑みたいにぶつぶつ言わないでくれ。」 

足田は黒いフルフェイスヘルメットを小脇に抱えて、全身真っ黒な服に真っ黒なキャップを被っている。 胸ポケットに無線機を入れているのか、長さ5センチほどのアンテナが出ている。 

「幸田、お前ここまで電車で来たのか?」

「そりゃ普通、蒲田くんだりまで来るなら電車だろう。 電車は良いぞ、効率面、費用対価的にみても時間に正確且つ経済的だ。 おまけに路線と時間を選べば綺麗なねぇちゃんがいっぱい乗っていて目の保養にもなる。」 

もう一人の小太りの小柄な幸田という男は緑と黒のチェック柄シャツにジーンズ、真っ黒なボサボサのロングヘアに黒縁メガネだ。 見た目は野暮ったいが、顔は整っており男前であるが、それ以外で全て台無しという見た目である。

一見して奇妙な二人組は足早にとあるラーメン屋店の前までやってきた。

看板にはこうある。

"種田ホープ軒"

「おお!これか、これが噂の宇宙人が経営するラーメン屋。 本当にあるのか。」

幸田は看板を見上げて感嘆の声を上げた。

「バカバカしい、お前本気で信じてるのか? 何度も聞くが、仮に宇宙人だったとして、なんでラーメン屋なんだよ。 あり得ないだろ普通。」

「足田、宇宙人のメジャースタンダードとは何だ? その普遍的且つ整合性の取れた一般論とは何処の世界の一般だ? 宇宙人はラーメン屋はやらない? そんな事は逆に言えば奇妙だ、やるかも知れないし、やらないかも知れない。」 

「あー、分かった分かった、お前の講釈はもう聞き飽きた。 とりあえず入ってラーメン食おう、腹が減った。」

「待て待て、もう少し店全体を観察してみよう。」

そう言って幸田は店の前を通る片道1車線の道路の反対側からスマートフォンを向けて写真を撮影する。

足田は呆れて、その様子を眺めていると、店の中から少し気の立った視線を感じる。

そちら側を目線を意識しない様に細心の注意を払って、視界の端に入る人物を捉える。

調理用の白衣、店主か? 客も一人いる様だ。怪しまれているのか、こちらを凝視しているな。 まぁ、客観的にみて店の前で彷徨いていれば怪しいか。

「おい幸田!いい加減にしてくれ、早く店に入ろう。」

「おお、分かった、食いしん坊の足田くん。」

幸田が赤い暖簾を掻き分けて、アルミサッシの引き戸をガラガラと開ける。

中には薄らと湯気が立ち上り、何かを刻んでいる店主らしき老人が正面に一人。 

向かって右側のカウンターに中年の男が一人、ビールをグラスに半分程注いで片手に持っていた。

店内にはテレビが設置されており、左のトイレ手前には本棚があり、漫画本が単行本で綺麗に整理された状態で整列していた。

カウンターの天井張り出しには手書きと思われる品書きが陳列してあり、紙の朽ち具合から見てかなりの年数を感じさせる。

幸田は一瞬でぐるりと目を回し、店内の様子を観察する。 店主と思しき老人は目つきが鋭い、だが威圧的なものでは無く、単なる人生の年季といったところか。 

だが、気になったのは中年の男。 この男、妙だ。 俺たち二人がドアを引いて入ってきた時点で、カウンターに座った位置から一瞬たりとも、ぴくりとも首も顔も目線も動かさなかった。 一貫して前だけを見ていた。

通常、二人きりの空間に、真後ろから背後に人の気配を感じて身体のどの部位も不動である事は稀だ。 一瞬見てしまうか、首が少し動く。
妙だ、まるで来る事が分かっていたみたいだな。

二人はゆっくりとカウンター席に座る。

店主が口を開く。

「いらっしゃい。お水はセルフだからね、そっちのコップ使って自由に飲んでね。」

そこで初めて店主が少し微笑んだ。

足田が頷いて、立ち上がって給水器に近づく。 その途中、中年の男の背後を通る。 

足田は感じる、この男、かなり危険な匂いがする。 こいつ、血生臭いな、悪人か? いや、悪人というか、、何か違う。 

足田の直感は理屈ではなかった。 忌部という新宿を拠点とする半グレ団体のリーダーを復讐の為に殺害する目的で、数年に渡り単独で半グレグループと死闘を繰り広げた人物である。

結果、忌部との直接対決によって環状8号線の殺し合いのレースに敗北して死に掛けたが、間一髪の所で、相棒の幸田の助けにより一命を取り留めた。 

生半可ではない反社との抗争の中で培った危険な人間を嗅ぎ分ける嗅覚が、その男の背後を通った瞬間に、頭の中で警報が鳴り響く。

こいつはかなりヤバい。

緊張の糸を切らさぬ様にしながらも、平静を装って、そのまま何食わぬ顔で水を汲んで幸田の隣にドスンと座る。 

「ほい、水だ。」

「おう、ありがとよー。」

幸田も平静を崩さない。 裏の顔では天才ハッカーの名を馳せる危険人物だが、表の顔はただの介護施設業者向け専門のシステムエンジニアだ。 足田が半グレとの抗争を続けていた際には偽造免許や偽造ナンバー、果てには偽の戸籍まで用意する裏社会への精通ぶり。 

最終的に忌部を仕留めたのは幸田と言っても過言ではなかった。

「オヤジさん、俺チャーシューメン。」

「じゃあ俺は、、、塩ラーメンで。 卵一個トッピング。」

あいよ。

店主が麺を茹でて、調理を手早く開始する。 流石に手際は良い、ここ最近脱サラして始めましたというレベルではない。

しかし、幸田は思う。 この男、話によれば元プロ野球選手。 これが、恐らく種田か、、。 果たしてこいつが宇宙人なのか?
ただのジジイにしか見えんな、しかし、消える魔球を投げたという伝説もある。 独自の調査によると、その消える魔球を巡っては当時かなりの揉め事もあったと聞くが。

直接このジジイに聞いてみるのも悪くないが、
それに際して気になるのはこの隣の男だ、恐らく足田もそれが気になっている筈。

さっきから一度も、ピクリとも動いていない。ビールも飲んでいない、ただ、持っているだけ
。 

唐突に店主が口を開く。

「山ちゃん。 今日はもう帰ってくれないか。」

水を打ったように店内が静まり返る。

少しの沈黙の後に、中年の男が何かを思い出したかの様に、まるで完全放電していた電池を、新品に入れ替えた後の壁時計の様に動き出した。

「え、おやっさんまだビール残ってるんだけどなぁ。 ナイター見ていきたいんだけんにょ、帰らないとダメ?」

「悪いね。 多分この人達ワタシと少し話があるんだと思うんだよね。 オタクら何か聞きたいんでしょ? そんな顔してるよ。」

「お、話が早いねオヤジさん。 まぁそういう事。 いやマスコミじゃないよ、俺たちはテレビでもない。 ただの好奇心なんだ、ただ本当のところは野球に全く興味は無い。
知りたいのは、"この店に宇宙人がいるらしい"という情報を聞いちゃったもんだから、真相を確かめに来たってわけ。」

その瞬間、中年の男の全身から奇妙な音が鳴り始める。

キキキキキ!

足田がカウンターから素早く立ち上がり、戦闘体制に入る、右手には既に特殊警棒が握られていた。

なんの真似だオッサン、何を鳴らした!

足田は叫ぶ。

「山ちゃん!今日は帰ってくれ。 後はワタシの方で上手くやるから。」

「おやっさん、彼等は少し知り過ぎてやしないかい? この前の半魚人の小僧とは訳が違う気がするでゴンス。」 

「半魚人じゃなくて半人前な。まぁ、山ちゃんも落ち着いてくれ、昔の約束を思い出してくれ。」

「ヤケクソ?ああ、それならヤケクソにゃ、分かってるでげすよ。 クニヤマのヤケクソ守るね。」

幸田は三者の様子を繁々と眺めている。

一人ニヤニヤとしながら幸田は思った、こいつはとんでもない店に来ちまったな、マジで宇宙人に会えるかも。








長い間更新できずにいたキエル魔球の続きをやっと更新したのだが、流石に間が空きすぎて書いている当人がどんなストーリーだったか忘れかけている事態に。

構成も微妙にあやふやになって思い出すのに時間が掛かって余計に書く意欲を阻害してしまったがなんとか強引に続ける。

本業のスケジュールがタイトすぎて余力が全くでない状況が結局1年続きで今年もあと残すところ僅か。

実は先日書いた河川敷ファーザー一家の続きも書きたくなって、事件に巻き込まれ体質の俊樹の別の活躍を描きたくなってしまい、そっちにも気を取られでひっちゃかめっちゃかであった。

とは言え、種田と國山の戦いはどういう着地に持っていくべきか、マウンド上での戦いも描く予定ではあるがその水面下で繰り広げられるマウンド外での二人の戦いも楽しみである。

そこへ別雑誌に掲載した小説で活躍した、個人武装した半グレ狩り(現在ボランティア人助けの人)足田と、天才ハッカー兼情報屋 幸田の危険なコンビも乱入してしまい、我ながら思うに素人のくせに難しい事を無理やりやろうとしてずっこけるパターンである。

まるで習いたてのギターを掻き鳴らす高校生の様である。

だがそれでいい、粗削りから粗を取って仕上げていく。それでいい、それが芦田流である。

2023年10月24日火曜日

芦田屋スケジュールのお知らせ

 なかなか小説の続きが書けずに日々もがいております。

そう言えば、店主の夢の一つに、本気で小説を書いてみたいという夢があります。

勿論今でもまぁまぁ本気で書いているのですが、有効時間の制限が高く、月に1時間確保できればかなり運がいい方で、欲を言うと1カ月丸々使ってみたいと思っています。

今の所、それが出来そうな雰囲気は全くありませんが。

当面は四の五の言わずに今芦田屋を必要として下さっているライダーのお役に少しでも立てる様に日々拙い蓄積したスキルをご奉仕させて頂く所存でございます。

11月以降の日程でお知らせがございます。

イベントを少々、後は鞭打った体に少し休憩を入れさせて頂きます。




2023年9月23日土曜日

44歳マグナム。

最近自分が若輩なのか老獪なのか分からない年齢だなと思う事が多々ある。

44歳というと、そういった年齢なのだろうか。

随分と気も長くなり、客観的に見てもこれは痛いな!という言動を回避できるようになってきて、立ち回りも随分と器用になった実感がある。

それを会社員時代にやっとけよという話であるが、30代の店主は不器用であった。

頑なであり、自信家であり、努力家であり(日本的には自分で言うべきではないが敢えて明快な文脈にする為)、20年以上の現場経験値があり、それらが周囲との少なくはない摩擦抵抗係数として潜在的に自身にストレスを与えていた様に感じる。

無論周囲に対してもストレスを加える存在だったのではなかろうか。

元々気難しい事を考える気質なので、シンプルイズベストの思考回路の人間や、超楽観的な人からは煙たい存在であったと思う。

ある人には根暗と言われたこともある。

が、根暗ではない、物事の正体を、哲学的な部分と社会学的な部分とを分け隔てて考えたいだけである。

まぁそんなことはどうでも良いのだが、40代も中盤になり、30代の若い方々の言動をとてももどかしく感じるようになってきた。

もどかしいまでは良いのだが、そのままではうまくいかないぞいう言動を如何に良好な結果を出せる様に指南するべきか。

対人とのやり取りの中で、論理的にはそれで良い、理屈は確かにそう、あなたは間違ってはいないのだが、、、そこはへりくだって忖度しなくては相手は心地良くない。

その相手にその経験値を真っ直ぐぶつけるのは絶対上手くいかない。 

そういった事が凄く分かる様になってきて、それを攻めの一手で戦う30代を見て、店主の様な年代はどう導く、はたまたアドバイスしてあげる(30代にアドバイスはとても難しい、良薬口に苦しになりがちである)のが王道であるのか?

いや、王道はなくとも、最大限の良好な結果を導き出すにはどのような立ち振る舞いを見出すべきか?

そんな取り付く島もない様な事柄をぼんやり考えたりする日々ですが、まぁ組織を完全に抜けた浪人の立場でありますから、後輩の世話も下手をすると余計なお世話になりかねませんから、程ほどにしつつ。

いつもまでも頼りがいのある、安心感のある先輩で居てあげたいなと思ったりしています。

自分には最終的にそういった先輩は一人か二人になってしまいましたから。

今でも思い出すのは、30代の頃は上司と呼べる人にあまり尊敬できる人はあまりいなかったような、、、。 思えば悪い人ばっかりだっただろうか。

だが、そのこと自体は悪いとも思わない、世界には良い人と悪い人が両方いてその割合は常に社会的な大きな力によるバランスであるから、個人にとってコントローラブルではないし、操作不能なラプラスの悪魔的な運命の部分が大きい。

途轍もなく非合理的な業務を指令を受けたりして、それを真っ向から非合理的な部分を指摘してあたりが強くなってしまい随分と肩身の狭い思いをしたこともありつつ。

そんなことも思い出していると、30代は第2の思春期とも言える様な気がしてならない。

そんな思春期に入った大の大人の取り扱い、世の40代のおじさん達は大変苦労を重ねている事だろう。

50代に入ればまた新たな境地が見えてくるのだろうが、当然店主にはまだ見えない。

だから先輩方のお話は慎重に、心の耳を傾ける様にしている、そんな事は知っているというような話でも、先入観は一度捨てきって、やはり改めてじっくり聞く様にしている。

そうすると、重要な補足事項が含まれている事に気付いたりする。

やはり40代、この辺りが結構器用だぜ。

しかしそうやって50代、60代とやって行く内に、あら不思議、ぽっくり逝ってしまうのか、儚きかな人間の一生。

人間性の完成とは一生を終える事に帰還してしまうのだろうか?

まぁどうでも良いんですが、11月にレース復帰予定なのですが、今から恐くて仕方なくて。

ずっとこれまで一度も怖くなかったんですが、不思議です、怪我や転倒でお店に何かあるとどうしようかと恐くて仕方ないです。

この雨が終ったら漸く秋が来るのか。









2023年9月1日金曜日

キエル魔球 ~新山運送 新山~ その1

 「はいはい」

 

電話の相手は無愛想な印象で、端的に返事だけを発した。

 

新山運送は従業員数50名を抱えるそれなりの中小企業であり、走らせている関東のトラック便も関東圏内の業界ではそれなりのシェアを誇っていた。 

 

特に千葉県内のシェアが強く、地元企業としては有力な方である。

 

しかし中小企業にありがちな、配送の依頼ではない案件に関しての窓口以外は存在せず、とりあえずのホームページに記載されていた代表番号に加藤はこれまた若さなりの勢いと情熱に身を任せて、いきなり電話を掛けてみたのである。

 

「あ、失礼ですが、新山運送様のお電話で間違い無かったでしょうか?」

 

「はい、そうだけどどちらさんかな?」

 

加藤は大手の新聞社の一員であるが故に、こういった類の対応には些か不満を感じる、大手では決して許されない横柄な態度である。

新山運送の社員教育はどうなってるんだと、憤然としてしまったところで、まさかと思う。

 

「大変失礼ですが、お電話口の方は新山社長でしょうか?」

 

「ああ、そうだけどね、お宅は誰なの?」

 

加藤は身分を明かし、電話した要件と新山運送に行き着いた経緯を細かく説明した所で、新山社長、つまり元千葉ロッテシャークス新山投手はこう答えた。

 

「國山さん…アンタ本気でそれ嗅ぎ回ってるのか? あ、ダメだ、電話だと話せない、要件は分かったからとりあえず会社に来てくれ。 車で来るのか?」

 

「は?勿論こちらからお伺いさせて頂きますが、電話で話せないというのはどういった事情なのですか?」

 

「いや、それも会ってから話す。 後もう一つ、種田という人に会ったか?」

 

「種田さん、勿論お名前は聞いてますが、國山選手の取材上で候補に上がっていますが、まだ会ってませんね。」

 

「それなら良かった、会わずに来てくれ。」

 

加藤は電話の後、駒田元実況アナウンサーの自宅を出て、秩父から直接千葉県柏市にある新山運送まで車を走らせていた。

 

加藤は流石に遅い時間に申し訳ないと思ったのだが、当の新山社長は気にも留めなかった。

何時でも会社にいる、中小企業の社長に休みなんてないと、社長はそう断言した。

 

夕方ごろに秩父を出て、柏市まで一旦関越道を戻って外環で行くしかない。 2時間は掛かる。

 

道中、ぼんやりとまた長閑な景色に目を見やって、駒田氏の言葉を思い出す。

 

國山のヒーローインタビュー。

 

"皆さんの命もなんたら" "引退もせず河川敷で死体で見つかる"

 

一体どういう事なんだ?

 

彼は野球選手ではないのか?

 

だとしたら何の為に野球をやってたんだ?

 

疑問ばかり出てくる、調べれば調べるほど謎だらけだ。 4割打ってた野球選手を調べるだけで、何故こんなに妙な不気味な背筋がゾクゾクする悪寒を感じるのだろう。

 

そこに突然スマホに電話が入り、車のオーディオパネルに"公衆電話"の表記が表示される。

 

加藤は直感的に全身に鳥肌が立つ、この電話…何だ、何故か出てはいけない気がする、何故今時公衆電話なのだ?

 

が、記者としての気概か、出れる電話は全て出る。 情報を得られる機会を僅かでも失わない、関さんに叩き込まれた基本だ。

 

加藤は通話のボタンを押す。

 

「もしもし。」

 

「ジー、ジー、ガガッ」

 

「もしもし?どちら様ですか? 新山さんですか?」

 

「ガガッ、地球人はよく働く。 だが、働きすぎは良くない…暫く休みを取ったらどうか?」

 

「あんた誰だ? 急に何を言ってるですか?」

 

「ジジジー、休め、止まれ、止まれ?じゃないや止めろ?」

 

そこで電話が切れる。

 

加藤は急に恐ろしくなってサービスエリアに止まり、自動販売機に早歩きで駆け寄り、お釣りを取るのも後回しにしてブラックの缶コーヒーを一気に飲み干す。

 

何ださっきの電話。 何だろうこの違和感、この世のものでは無いような声の質感と言うか、違和感。 電波の様なノイズを聞いている様な。

 

変な言葉を聞いたような感じ、この世の言葉ではない様な。

 

この世の物ではない? 國山…國山? 國山だと? あの雰囲気、まさか。

 

しかし、あり得ない、國山はとうの昔に死んでいる。 実際に遺体も出ているし、その後國山を見かけたなんてオカルトも聞いた事がない。

 

この取材、やばい感じがする。

 

だが、暴かないといけない気もする、國山選手の謎。 

 

気を取り直し、加藤は車を猛スピードで車を走らせて、外環から首都高速6号、国道16号へと走らせていく。

 

ようやくの長いドライブを終えて新山運送株式会社に到着した際に驚いた。

 

会社の表でタバコを吹かしながらしかめっ面の初老の男性が待っていた。

 

「あの、中日スポーツの加藤と申します、新山社長はいらっしゃいますでしょうか?」

 

「待ってた、俺だよ。 良かった、アンタ無事に来れたか。」

 

「え? ああ、まぁ安全運転で来たので。わざわざ待ってくださってたんですね!」

 

加藤は新山の言う、無事にという言葉に引っ掛かりを覚える。 普通言わないな、無事に? 高が高速を車を走らせて来ただけだぞ。

 

「まぁ、とりあえずウチの応接室に来てよ、ここじゃ立ち話になっちまうでしょ。」

 

「恐れ入ります、お忙しい中お時間頂戴しまして申し訳ありません。」

 

「本当だよ、中小企業の社長は忙しいからね、何だったら人がいない時は俺が運転する時もあるんだから」

 

「そうなんですか! 社長自らですか?」

 

「うん、いやまぁ、それはどうでもいいか、それより國山さんの事だろ?」

 

二人は社屋に入り、階段を上がりながら応接室に向かう。

 

歩きながら新山が聞く。

 

「ところで加藤さんアンタ、あの人の事、どこまで調べたの?」

 

「本日は元実況アナウンサーの駒田さんへ取材に行って参りまして、そこで当時の試合の話などをお聞きして、その過程で新山社長のご活躍を耳にしまして…」

 

応接室のドアを開けて、新山がソファを指さして座る様に加藤を促す。 話しながら、手慣れた手付きで自身でお茶を入れる。

 

新山は元プロ野球選手だけあって背高でがっしりとした体格だ、背中も広い。 この体格に相待って恰幅も良く、少なくとも見た目だけで言えば差し詰め貫禄タップリの社長さんである。 

 

「ああ、それで俺があの人との勝負で滅多打ちになってその後引退した流れで聴いてる訳だね。 それ以外で國山さんの話は聞いたか?」

 

「いえ、駒田さんも國山さんは謎ばかりで詳しい事は分からないと。」

 

「ならそれでいい。 悪いことは言わない、もうこの辺でやめときな。」

 

「は?やめときなっていうのは、取材をですか?」

 

「そうだ、國山さんの事は謎で良いんだよ、それでもう解決したし、苦労して解決した人がいるんだ。 その人の苦労を台無しにしちゃいかん。 それに…」

 

「何ですか勿体ぶって!」

 

加藤は全身でやばい案件の匂いを嗅ぎ取る、記者の勘というものかも知れない。

 

「アンタみたいに國山を追いかけて消えた人間がいる。」

 

「消えた?行方不明って事ですか? 何ですか、バカバカしい、國山さんは反社が何かの親分さんですか?」

 

「まぁみんなそう言うんだよ、バカバカしい、そうだよな。 だけどな説明不可能な事だって世の中には沢山ある。 おかしな事が周りで起きてしまう、最初からおかしかった…あの人が球界に入った所からおかしかったんだよ。」

 

「新山社長、一体何を知ってるんですか? 話して下さい。」

 

「アンタ命知らずだな、この会話だってどこまで聞かれてるか分かったもんじゃないんだが…分かった。 まぁとりあえずお茶飲みなよ。」

 

そう言って新山はお茶を加藤に勧める。

 

その手が少し震えているのを加藤は見逃さなかった。

 

怯えている? 加藤は縦横無尽に駆け巡る好奇心と、先程の公衆電話からの会話の恐怖との交錯で、自制が効かなくなっていた。

 

こんな時関さんなら一旦落ち着いて家に戻って一呼吸置くのだろうか?

 

まるで先が早く知りたくて、グングン読み進めて止まらなくなってしまった小説の様だと感じる。

 

加藤は新山の話の結末を、水に飢えた植物の様に吸収していく。 

 

一方その頃、大田区の種田ホープ軒に変わった二人組の男達が来店していた。




以前一度月一回更新を断念しているので、特にそこに拘る必要は無いのだと思うのだが、やはり一度自分に負けたからとはいっても、2度負けたくない。
一体何と戦っているのだろうかと思う事もあるが、ここが結構大事なところだと思う。
何かが途絶えてしまってもういいやとなる事は、日常的によくある事だが、そこからもう一度、以前と同じ様な情熱でトライし続ける負けん気というのが、結果を出していく上で、大切だと思うのである。
これは仕事上で非常に役に立つことが多い。
まぁ平たく言えば、不屈の闘志的な物だろうか。
こういう考え方で、日々楽しいのか?と聞かれる事もあるが、日々チャレンジすることは楽しい。 重要なのは、心に悪影響を及ぼす程に自分を追い込むか追い込まないかであるから、チャレンジ自体は本来楽しい物なのである。 要は心持が肝要であるという事だろうと認識している。
それにしても、高架下は常に寂しい。 何故だろう、不思議だ。


2023年7月27日木曜日

キエル魔球 ~元実況アナ 駒田 その2~

 1983年度のドラフト指名で圧倒的に票を集めたスーパールーキー新山和樹選手は千葉を本拠地とする千葉ロッテシャークスに入団、初年度のオープン戦中から奪三振を量産して先発投手として1984年からエースとして活躍した。 驚異的なスピードを誇るシュードボールと決め球のストレートを使い分け、ファウル以外は打つ事が困難といわしめた。 

しかしながら、マウンド上での活躍の慢心からか、プライベートでの素行の悪さが目立つ様になり、チームメイトや取材陣への言動にも大柄さが出る様になる。

 

だがそれも、平均防御率1.45という驚異的な成績で周囲を黙らせた。

 

プロ3年目となる1986年のペナントレース前半戦を終えてオールスターゲームへ出場が決まった新山投手は記者がこう質問したことがある。

 

「新山選手!オールスター戦決定おめでとうございます。 セリーグ側には当然國山選手も出場決定していますが、対戦への意気込みなどあれば、伺いたいのですが!」

 

「4割バッター國山さんですよね、まぁ良い選手ですよね。 しかし、打ち取れない様な打者ではないと思うんですよ。 申し訳ないですが、こう言っちゃなんですが、よくあのバッティングフォームでよく打てていますよね、身体の軸なんてフラフラしてるし。 普段から対戦してる訳ではないですが、当然打たせないですよ、宣言しちゃいます。」

 

「当然投げ勝つと?」

 

「当然です、確かに当てるのは得意みたいですが、ファールしか出ないでしょうね。」

 

「楽しみにしています!」

 

問題の1986年オールスター戦の新山vs國山は1戦目に早々に実現した。

 

先発新山対、4番國山の第一打席はファウルボールが2本、カウント2ストライク1ボールになっていた。

 

芯で捉える事はまず不可能と呼ばれる新山のシュートボールのキレはこの日も驚異的だった。

 

新山が投球フォームに入り、グローブを胸の前で包み込んで、祈る様に目を閉じる。

 

左足を軽く上げ、振りかぶってバッターボックスを目掛けて投げ放つ。

 

球速150キロ後半をマークしながら真っ直ぐ伸びていく弾道は、ストレートにしか見えないが、バッター直前で僅かに斜め下へ下がりながら、ホームベース側から見て左へ急激に曲がる。 

 

右バッターの國山にとっては、デッドボールではないかと思わせる程に弾道に体が近く、身をフラフラと引きながら、グリップに近い位置へ当ててファウルへと持ち込む。

 

恐らく前に飛ばそうと思ってしまうと、内野ゴロが積の山になってしまう所である。

 

既に第一打席でこの応酬が8球連続続いていた。

 

新山はここで感心した。

 

「確かに凄いな、目が良いのか、当てる勘が鋭いのか、球筋を読んで絶対にバットを当ててくる。 まだ一回も空振りしていない、それにしてもあの涼しい顔はなんなんだ、デイリーヤマザキに買い物に来ましたくらいの感じだ。 イラつく男だ。」

 

カウントはツーストライク、新山はそろそろ打ち取りたい衝動に駆られ、勝負に出ることにした。 

 

普段はシュートの山で追い込んで、いつ出るかわからない高速ストレートがフォークで打ち取るというのが決め球になる。

 

新山はストレートで國山を打ち取る事にする。

 

新山の10球目、渾身の高速ストレートは161キロを記録、一見してシュートと見分けがつかない。 打者はここまで全てシュートを投げられここでストレートと判別するのは非常に困難である。 

 

が、この打球で國山のバットは球を真芯で捉える。

 

バットが心地よくしなって、球が瞬間的に柔らかく感じる。 

 

球場全体が一瞬息を止めた事が分かるくらいに静まった後、大歓声が湧き上がる。 

 

打球は高々と上がり、レフトスタンドの奥深くに突き刺さった。

 

國山は少し微笑んで、独り言をぶつぶつと言いながら、悠然と一塁ベースを蹴ってダイヤモンドを一周する。

 

「なんでだ、投げた瞬間に完全にストレートを読まれていた。そんなバカな。」

 

新山は投げた瞬間にここで打つという体制を取った國山に戸惑いを隠せない。 

 

そして新山の悪夢はこれで終わる事は無かった。

 

続く第二打席、第三打席、國山に初球を本塁打された。

 

9回まで新山は國山以外の打者を完璧に凡退に打ち取っていたが、國山だけを退けられない。

 

「なんなんだこいつ!なんでだ、なんで、どうなってるんだ!」

 

新山は完全に精神的に敗北していた、今まで味わった事のない恥辱に晒され、めった打ちにされ、プライドをズタズタにした、國山に憎悪に近い感情を抱く。

 

と、更にそこで國山が第四打席でとある行動に出た。

 

球場からクスクスと笑いが止まらなくなった。 誰もが、コメディ映画を見て失笑している様な笑い声。

 

國山は右手一本でバットを構え、打席に入った。

 

この勝負はもうついていた、天才4割バッター國山は誰も打ち取る事が出来ない。 

 

完全にキレてしまった新山は新山で、ここでデッドボール覚悟の球を投げる。

 

新山の手を離れたボールは明らかに異常に打席寄りの弾道を走り、真っ直ぐ國山に向かって来る。

 

球が新山の手を離れた瞬間、誰もがここで遂に國山が打てないだろうと思った。 流石の國山も、普段このレベルの悪球を無理に打つ事はなく、甘んじて避けるか、死球で出塁する事もある。 それ故の4割であり、4割バッターとはそういったレベルなのである。

 

しかし、國山は今回両膝をコンパクトに畳んだ後、カエルの様に後方へ飛びながら、同時に右手に持ったバットを無茶苦茶な振り方で振り回して、殆ど大道芸の様な体制でパコンと球に当てて見せた。

 

自身は後ろへ飛んだ勢いで、後方でんぐり返しの様な状況で転がっている。

 

当たった球はフラフラと舞い上がり、観客はため息を吐く。 ああ、これはフライだな、そう思わせる当たり。

しかし、そのため息が大体終わる頃、ライト側のフェンスのギリギリに球がスポッと入ったのであった。

 

ホームラン。

 

國山は4打席全てホームランにしてしまった。

 

その夜、國山はヒーローインタビューでこう語った。

 

「実地調査が終わるまでは皆さんは平和な生活が送れる事にゃ、皆さんそれ迄の命…じゃないや、せいぜい野球を楽しんでくれにゃ。

しかし、新山ちゃんの球は悪くないんだけど、この星の、じゃないや、この球界の最高の球じゃないかな! この國山が打てないもっと難しい球を投げる投手が現れると良いにゃ。」

 

球場からは更に笑いが湧き上がる、狂人國山、そして天才バッター國山はこの事件をきっかけにこう称される。

 

"宇宙人バッター國山"

 

後に新山選手は、この國山選手との対決を、新聞記者にこう語ったという。

 

「全身の毛穴から汗が吹き出して、生まれてこの方かいたことのない恥を晒すことになるのではないかと思い、もう終盤は指に力が入らなくなってしまいました。

なんと言いますか、本当に逃げ場がなくなった時に子供みたいに無性に泣きたくなるあの感じですかね。 あの人、國山さん、もしかしたら、本当は4割以上打てるけど打ってないだけなのかも知れない。 なんとなく、そんな気がしますね。」

 

因みにではあるが、新山投手はこの後のペナントレースで急激に体調を崩して故障を乱発して、一軍を退き、引退してしまっている。

 

後に新山運送という運送会社を立ち上げ、現在は当運送会社の代表取締役として就任している。

 

「いかがですかな?加藤さん。 これが現実のプロスポーツ界で起きた事とは思えないゲームの詳細なのですが。」

 

「あり得ないですね、右手一本で当時のスーパーエースを滅多撃ちですか。」

 

「そうです、國山さんとはそのくらいやってのける人でした。 気になったのはそのヒーローインタビューで、皆さんの命がなんとかとか言っていましたし。 当時は熱狂して皆一様に何かの冗談かと思ったみたいですがね。」

 

「だけど、それに纏わって國山さんが何か事件でもしでかしたという事実は出てきませんよね?」

 

「そうです、國山さんは引退もせず、ある日突然失踪して、そして死んだ。 多摩川の河川敷で死体で発見されたんです。死因は今も不明です。」

 

「うーん、新山さんは現在も地元で運送会社を経営されておられるのですよね?」

 

「噂で聞いた限りでは、その勝負の後、スッカリ野球への情熱を失ってしまってね。 今では会社の運営の方がすっかり板について、良い社長さんになられたとか。」

 

「俺、新山さんに会ってきます。」

 

「あぁ、それはどうかなぁ、新山さん次第ですな。 でも何事も当たって砕けろですね、お若い方のチャレンジは多分歓迎されるのではないかと思いますよ。」

 


キエル魔球も4回目に入って、相当難しい感じになってきてしまった。 國山と種田を引き合わせるまでの線と点がなかなかの難しさである。 國山の危険度を少しずつ臭わせるあたりも、匙加減がとても難しい。 種田の活躍が先延ばしにせざるを得ない点もかなりもどかしい。
小説を書くのは途轍もなく難しい、バイク修理と同じくらい難しい。

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